電気代は下がらない、富山の中小企業がまず着手すべき省エネ対策

はじめに
2026年後半、電気代が下がる材料は見当たらない。値上げ要因が複数重なり、しかもそれを相殺してきた政府補助金は縮小に向かっている。富山の中小企業にとって、これは「様子を見て静観する」段階を過ぎ、「何から手をつけるか」を決める段階に入ったことを意味する。本稿ではエネルギー管理士の視点から、値上げの構造と、着手すべき順序を整理する。
電気代を押し上げる三つの要因
まず押さえておきたいのは、今回の値上がりが一時的な変動ではなく、複数の制度要因が同時に動いている点である。
経済産業省は2026年3月19日、2026年度の再エネ賦課金単価を4.18円/kWhにすると発表した。2025年度の3.98円/kWhから約5%の上昇であり、初めて4円台に乗った1。再エネ賦課金は使用電力量に比例して全事業者に課されるため、低圧電力契約の中小企業でも確実にコスト増要因になる。
これに燃料費調整額の上昇が重なる。輸入燃料価格の上昇と円安を背景に、2026年7月ごろから調整額が上昇傾向にある2。さらに、一般送配電事業者8社は2026年11月1日から託送料金の改定を予定している。託送料金は電気料金に含まれるため、改定は電気料金の値上がりに直結する3。
追い打ちとなるのが、政府による電気・ガス代補助金の先行き不透明さである。2026年夏の支援は令和8年度予備費を使った3か月限りの時限措置であり、2026年9月使用分(10月検針分)で終了する見込みが立っている。10月以降の継続について、2026年8月時点で政府から正式な発表はない4。再エネ賦課金・燃料費調整額・託送料金という三つの上昇要因が重なる一方で、それを緩和してきた補助金が抜ける。この組み合わせが、2026年後半を「電気代が下がる材料のない局面」にしている。
富山県の補助金は今は使えない
値上げへの対抗策として補助金を思い浮かべる経営者は多いはずだが、ここで一つ注意が要る。
富山県の「中小企業エネルギー効率化推進補助金」は、2026年度の募集期間が8月3日から8月31日までの1か月間に限られており、本稿を書いている9月5日の時点ですでに募集が終了している5。次回公募の有無は現時点で未公表であり、問い合わせ先は富山県中小企業エネルギー効率化推進補助金事務局(電話076-411-5090)である5。「今すぐ申請できる県の補助金」として紹介するのは実態に合わない。
一方、国が運営する「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、経済産業省(資源エネルギー庁)所管で一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が代表幹事となり、2026年3月30日から公募が始まっている。2026年度は3次公募まで予定されており、業務用エアコンや制御機能付きLED照明、変圧器といった設備単位の更新から、計測・見える化・制御機能を備えたエネルギーマネジメントシステムの導入まで対象になる6。交付申請額の合計が予算に達した時点で打ち切られる可能性があるため、早期の申請が有利になる。富山県の補助金を待つのではなく、今から動けるのはこちらである。
エネルギー管理士の視点、設備投資より先にやること
補助金の話が出ると、設備を新しくする方向に意識が向きやすい。だが、エネルギー管理士の立場から見ると、省エネの手順にはもっと手前の段階がある。
省エネの取り組みは大きく、費用のかからない運用改善と、設備投資による改善の二つに分かれる。設備投資に入る前に、まず自社のエネルギー使用実態を数値で把握することが最初の一歩になる。経済産業省補助の「省エネ最適化診断」は1万450円から1万6,500円(税込)という低い費用で受けられ、しかも提案の約4割は費用のかからない運用改善だという7。数万円の投資すら不要な改善が、診断を受けるだけで4割ほど見つかる計算になる。
診断を経たうえで着手先を選ぶなら、投資回収の早さを基準にするとよい。LED照明化は空調更新に比べて改修コストが低く、費用対効果が高い傾向にある8。契約電力(基本料金)を下げたい場合は、デマンド監視の導入も検討に値する。デマンド値は過去12か月の最大使用電力を基に契約電力を決める仕組みであり、監視装置で超過を予測し優先順位に沿って設備を一時停止するといった運用で最大デマンドを抑えられる。生コンクリート製造の河島コンクリート工業は、デマンド監視の導入によって契約電力を20kW引き下げることに成功した事例として報告されている9。削減幅は事業所ごとの使用実態によって変わるため、この数字をそのまま自社に当てはめることはできないが、設備更新をせずに契約電力そのものを見直せる余地があることを示す事例として参考になる。
まとめると、着手の順序は「診断で現状を数値化する」「無償の運用改善から着手する」「投資回収の早いLED化やデマンド監視に進む」「国のSII補助金を早期に申請する」「富山県補助金は次回公募を待つ」となる。値上げの構造要因が出そろっている今こそ、この順序を踏む価値がある。
富山の中小企業にとっての問い
問うべきは、値上げにいくら備えるかではない。どこから手をつければ、備えが最も安く済むかである。
診断の費用は1万円台、運用改善の多くは無償で始められる。設備投資や補助金申請はその後でよい。電気代が下がる材料のない局面だからこそ、まず数字を見るところから始めたい。
この記事はAZALLYが執筆しました。
Footnotes
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「2026年度の再エネ賦課金単価について」(RE Value、2026年) 2025年度3.98円/kWhから4.18円/kWhへ、初の4円台。 https://reivalue.co.jp/blog/4261/ および https://esd-assoc.com/renewable-energy-surcharge-2026/ ↩
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「電気料金値上げの動向」(エネチェンジ) 輸入燃料価格の上昇と円安を背景とした燃料費調整額の上昇傾向について。 https://enechange.jp/articles/electricity-price-increase ↩
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「託送料金の値上げ動向」(Selectra) 一般送配電事業者8社による2026年11月1日からの託送料金改定申請について。 https://selectra.jp/energy/electricity/price-increase ↩
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「電気・ガス代補助金の終了時期」(エネチェンジ) 令和8年度予備費による2026年夏の3か月限りの時限措置と、10月以降の継続が未定である点について。 https://enechange.jp/articles/electricity-subsidy ↩
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「富山県中小企業エネルギー効率化推進補助金」(富山県公式) 2026年度募集期間(8月3日〜8月31日)、問い合わせ先について。 https://www.pref.toyama.jp/1300/sangyou/shoukoukensetsu/shoukougyou/energy-kouritsukasuishin-hojokin.html ↩ ↩2
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「省エネルギー投資促進支援事業費補助金(令和7年度補正予算)」(資源エネルギー庁公式) 公募開始日、対象経費、SIIの運営体制について。 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/chiiki_partnership/news/2026/r7hoseikobo.html ↩
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「省エネ最適化診断サービス」(省エネ・再エネ最適化診断) 診断費用(1万450円〜1万6,500円、税込)と、提案の約4割が無償の運用改善である点について。 https://www.shindan-net.jp/service/shindan/about.html ↩
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「照明の省エネ」(エネテク) LED化が空調更新に比べ改修コストが低く費用対効果が高い傾向にある点について。 https://enetech.co.jp/guide/energy-saving-of-lighting-led/ ↩
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「デマンド監視システムによる省エネ事例」(渡辺電機) 河島コンクリート工業がデマンド監視導入により契約電力を20kW引き下げた事例について。 https://www.watanabe-electric.co.jp/blog/25721/ ↩
